2014年 08月 25日
古民家暮らし 北村 浩康 |
暮らしの中から住まいの設計を考えようと始めた古民家暮らしも10年を過ぎました。
縁あってお借りすることになった古民家は、
明治中期の建設で幸いにも大きな改造もなく、当初の姿を保っていました。
しかし、空家となってから20年近く放置された住まいは、
痛みが進み、放置された荷物で埋もれ、
とても人が住める状態にありませんでした。
一年かけてゴミを片付け、予算も限られていたので、
痛んだ部分を最低限直し、間取りをオリジナルの状態に戻して、
まずは暮らしてみようと考えました。
気密性断熱性は皆無で、設備も満足にありませんから、
暮らしは家に合わせるしかありません。
冬は日当りの良い南側の部屋を事務所スペースにしていますが、
夏は風通しが良く西日の影響を受けない北側の部屋へ移動して凌いでいます。
寝室も冬は薪ストーブの暖気が溜まる2階にありますが、
夏は1階の風通しが良い広間へ毎晩布団を上げ下ろししています。
湿気や臭いが籠らないよう作られたトイレとお風呂は、
渡り廊下で一度外に出なければならないので、冬場は億劫です。
LDKのように用途が決められた部屋はありませんので、
季節や気分に合わせ、居場所をその時々で変えながらの暮らしは、
便利ではありませんが、ちょっとした変化を日々感じることが出来る豊かなものです。
家に合わせ、工夫をし、快適な場所を探しながらの暮らし方は、
今の価値観とは違うところにあるものですが、季節感であったり、時間であったり、
住まう人に「気持ちの変化」を与えてくれる良さを実感しています。
古民家には用途や機能とは関係のない部分にこそ魅力を感じます。
今の住まいにはそんな魅力があるのだろうかと、
暮らしのなかから考え続けたいと思います。
by jia-nagano-khito
| 2014-08-25 00:00
| 建築家のひとりごと